photo : Lukasz Gasiorowski
The Distance
カトリックの聖地「Santiago de Compostela」へと続く1660kmの巡礼道を、日本の禅僧が托鉢によって踏破する旅の記録。ユダヤ人のカメラマン Lukasz Gasiorowski との共同作品。2011年4月から1年間、アーティストとしてパリに派遣された僕は、震災後も様々な問題で揺れ続ける日本を遠くから見つめ、福島だけでなく、日本という国全体が土地(故郷)を追われる未来を予感した。
一度も国土を追われたことがない民族が、初めて対面する事態。「文化」も「民族」も「宗教」も異なる土地を、身一つ、あえて彼らにとっては異相な姿で歩くことを決めた。
旅を始める前は、異なる背景を持っていても、きっと理解しあえると信じていた。出会った人々は異形の僕に対し、本当に優しくしてくれたが、同時に一定の距離を感じた。その距離は必ずしも埋める必要のない距離。「ちがい」は無くせると思い込んでいるから、むしろ問題は大きくなることを感じた。これからの時代は、一方で均一化、一方で多様化の時代。みんな同じ人間だと同一化するのではなく、お互いの「ちがい」を尊重しあうことでしか、問題は解決しないのではないだろうか。
「あらゆる神話が崩れました。『正しいこと』が何なのか、わからなくなりました。しかし足を止めるわけにはいきません。望まない事実をつきつけられるのは、子供たちです。彼らが何の上に生まれるのかを、私たちがもう一度見極めるべきです。」